台風被害を受けた、異次元物件にある庭門の修繕に本格的に取り掛かることにした。
部材を集めて一気に補修しようと目論んでいたが、そんなに甘いものでは無かった。
先ずは、10cm程度傾いた土台を上げていく。一部土台は完全に腐食していたが、柱や土台にジャッキをかけて持ち上げ下に基礎石を置く。
ジャッキアップは簡単に完了し、木組へ取り掛かる。
この庭門、数寄屋造りで、面白みのある部材が多用されている。
中でも、最も目を引くのが軒天の意匠。
軒天材の下は、丸、四角、天然木もが絡み合う独特な意匠。
軒天には、薄い板材(厚さ1.5mm~2mm程度、幅150mm)が使われていた。
薄い材料なので、どこかにあるだろうと高をくくっていた。
材木屋さんに相談すると、そんな部材は無いとのことで、材木に詳しい材木卸へ電話で聞いてくた。
すると、この部材、木材を割って作る「へぎ板」と呼ばれるものらしく、ちょうど、別のお客さんが鎌倉で茶室を作っていた時に発注した余りがあるということ。
その足で、材木卸店へ向かう。
巨大な倉庫に、変わった材木、銘木が沢山。
奥の倉庫から出てきたへぎ板。クロベと書かれている。
このへぎ板、かなり豪華なお値段でしたので、ピッタリの分量だけ購入。
さて、へぎ板について詳しく説明を書こうと思ったが、「百聞は一見に如かず」これを見ると良く分かる。
へぎ板は、ネズコ(黒檜(くろべ)ともいう)という材木から割り出された材料。
ネズコと言えば、人気漫画、鬼滅の刃でも登場した「ねずこ」。これが由来だと言う。
ネズコは木曽で森林資源保護のために伐採が禁止された「木曽五木」の一つ。
とても貴重な高級部材で、主に茶室や日本家屋に用いられる。
割って作られるため、表面の艶、凹凸が大変美しく、そして、繊維細胞を壊していないため丈夫。
木材卸のおじさま曰く、現在、へぎ板を作る職人さんはほとんどいないらしく、若い人を探しているという。
以前、丸太から割ってへぎ板を作った若い大工さんもいたとかいないとか。
伝統の日本建築には新建材で造られた家にはない、様々な面白い部材が詰まっているので面白い。
コメント